残業時間の上限超えによる労災の連帯責任
【案 例】
労務派遣会社A社と雇用企業B社は労務派遣協議書を取り交わし、A社がB社に派遣社員を提供し、毎日勤務時間11時間、毎月最低勤務時間286時間と約定した。その後、A社は従業員Cを雇用し、B社に派遣したが、労災保険を加入しなかった。
CはB社に入社後、連続3か月間の勤務時間が319時間、293時間、322.5時間、毎月の休日は3日間を超えなかった。ある日、Cは夜勤時に倒れ、医療機関に搬送し救急治療後に死亡した。病因は心筋梗塞であった。社会保険部門はCの労災を認定した。
A社は仲裁結果に不服のため、裁判所に訴訟を提起した。
【裁判結果】
第一審の判決結果は、『労災保険条例』の関連規定に基づき、雇用側がCの労災保険を加入していなかったため、死亡に関連する賠償は全て雇用側が負担する。A社とB社は連帯賠償責任を担い、「医療費」、「一括支給の労災死亡補償金」、「葬祭費補助金」、「遺族補償金」などを賠償すべき。
B社は不服のため、上訴を提起した。第二審の判決結果は、上訴人の請求を却下し、第一審判決を維持するものであった。
【分 析】
本案件の争議焦点として、Cの残業時間上限超えによる労災は雇用企業B社と労務派遣会社A社が連帯責任を負うべきか否かに関する問題である。
『中華人民共和国労働法』、『中華人民共和国労働契約法』、『国務院の労働者勤務時間に関する規定』(国務院令第174号)などの関連規定に基づき、休息権は労働者の基本労働権利であり、労働者に残業代を支払ったとしても、労働者の勤務時間は法定の労働時間延長上限により制約される。労務派遣において、労働者の残業時間上限超えによる労災は、雇用企業及び労務派遣会社が共に責任を担い、連帯賠償責任を担わなければならない。