虚偽の労務派遣による責任回避の判例
【案 例】
Aさんは2010年に自動車会社に入社しました。自動車会社はAさんにR社と『労働契約書』を取り交わさせ、Aさんの毎月の給与は自動車会社が支払っていました。自動車会社はR社と『労務派遣協議書』を締結しましたが、『労務派遣協議書』に賃金待遇や支払方法などの関連事項を約定していませんでした。また、R社は労務派遣資格がなく、Aさんに対する管理も行っていませんでした。
数年後、Aさんは自動車会社との労使関係解除で紛争が生じ、労働仲裁を提起しました。
【事実認定】
広東省高級人民裁判所は案件の審理を行い、下記の事実を認定しました。
1.R社はAさんに対する管理を行っていない。
2.R社は労務派遣資格がない。
3.R社は毎月Aさんに給与を支給したことがない。
⇒ よって、AさんとR社が取り交わした『労働契約書』は虚偽である。
また、Aさんは自動車会社と『労働契約書』を取り交わしていないが、
1.自動車会社は毎月Aさんに給与を支給している。
2.Aさんは事実上、自動車会社に労働を提供している。
3.自動車会社の規則規定に基づいて、Aさんの労働行為を管理している。
⇒ ・自動車会社は虚偽の労務派遣関係を通じて、主体責任を回避していた。
・Aさんと自動車会社は事実上の労使関係特徴があり、両者間には無期限の労使関係が成立し、自動車会社が雇用企業としての主体責任を負うべき。
【判決結果】
雇用企業が虚偽の労務派遣により主体責任を回避する行為は信義誠実の原則に違反し、労働者の合法な権益を侵害しました。裁判所は双方の実質的法律関係を審査し、実際の雇用企業が相応の主体責任を負うべきであると判決を下しました。