労働者が犯罪に係わった場合の処理
【質 問】
実務において、労働者が犯罪または違法行為に係わり、公安機関に立件調査された場合、多くの企業は『立件通知書』を受領した途端に、企業の制度(刑事責任を追及された場合は解雇)に従い直ちに労働者との労働契約を解除します。そして、労働者はその企業の解雇処分に不服で、労働仲裁機関に企業の違法解除を訴えることがよくあります。
このようなケースでは、企業はどのように対応すべきでしょうか。
【回 答】
まず、理解として、「公安機関に立件調査される」は、必ずしも結果として「刑事責任を追及する」というわけではありません。裁判所が効力の発生した判決を下すまでは、如何なる者も有罪と認定されることはありません。
上記のケースでは、すでに企業が従業員を解雇し、従業員は仲裁を提起しています。ですので、仲裁の裁決根拠(労働契約の違法解除にあたるか)は、労働者が犯罪を犯したかどうかによります。よって、企業は労働仲裁機関に対して、公安機関の調査結果を待つという、仲裁プロセスの中止を申請することができます。
労働仲裁機関は、企業の申請を審査し、「労働者が立件調査された」ことが「労働仲裁案(労働契約の解除)」に関連性があると判断した場合、仲裁プロセスを中止し、公安機関が最終結果を出した後に改めて本件の裁決を行います。
ですので、企業が「刑事責任を追及された」ことを事由に労働者を解雇したい場合、解雇の事実が刑事案件に関連性があり、且つ十分な理由、事実、証拠があり、労働者に確かな犯罪事実が存在すると確信できるのなら、解雇処分を行うことができます。でなければ、慎重に処理すべきです。
また、労働者が仲裁を提起する際に、同時に公安機関の立件調査と関連性がない仲裁請求を提出した場合、例えば、残業代の紛争、社会保険料の納付紛争等、労働仲裁機関は先に当該請求に対して裁決を行なうことができます。